偶発的偶発性の自己怪事
【第10回:吃音②】

「1級キャリアコンサルティング技能士の大井宗太郎が人生を振返る中で見つけたキャリアサンプル」を不定期にお届けするコラムです。
“同じ”ではなかった──吃音経験者としての過信と、支援者としての大失敗。
 どもりは成長する中で、徐々に改善はされましたが、やはり緊張する場面ではどもりがでます。就活の面接でも出まくりました。新卒の就職先で電話に出るのが怖かったです。幸い、発しやすい社名でしたが、その後のやり取りで緊張してどもりまくり。慣れれば、改善はされますが、仕事は緊張を伴う場面ばかりですから苦労の連続でした。

㈳全日本マカロニ協会(現:日本パスタ協会)は、国産パスタの品質向上と普及拡大が目的です。全国30都市を周ってパスタ料理教室を開催するキャラバン仕事がありました。最初はアシスタントでしたが、途中から進行役・司会者を命じられました。大勢の主婦を前にどもりまくりの酷い司会者でした。友人の結婚式でも司会を頼まれ、拒んだものの「大井にやってもらいたいと昔から決めていた」と言われて仕方なく引き受けましたが、どもりまくりで友人の母からは大不評を買いました。人前で話す機会も増え、慣れることで徐々に改善されて現在に至る、という感じです。

ある日、クライアントの青年は、極度のどもりでした。私に相談内容を伝えるのも一苦労。面接が全く通らない。どうしたら良いか?という相談です。私は思わず、「私も吃音者です。一緒に考えましょう」 大失態です。自分でさえ、あれだけ苦労してきたのに目の前にいる極度の吃音者の苦労に思いが及ばない安易な発言。彼はとても自分の比ではありません。彼の前で私は全く無力でした。障碍者雇用の話とか、余計な話をしたり、どのように面談を終えたかも定かではありません。本当に申し訳ないことをしました。あの時の青年に謝罪します。ごめんなさい。

調べて、NPO法人日本吃音者協会の勉強会にも参加しました。今の自分は吃音者じゃない。だから当事者の苦しみは理解できない。そういうスタンスになりました。最近徐々に吃音についてメディアで取り上げられるようになりました。吃音者が主人公の映画「ぼくのお日さま」ご覧ください。主題歌「ぼくのお日さま」も素敵な歌です。注文に時間がかかるカフェにも、是非、行ってみてください。

筆者プロフィール

筆者:大井 宗太郎
Sotaro Oi

1級キャリアコンサルティング技能士

大井宗太郎が担当する講習

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