計画的偶発性の自己怪事
【第14回:エグゼクティブ】
「1級キャリアコンサルティング技能士の大井宗太郎が人生を振返る中で見つけたキャリアサンプル」を不定期にお届けするコラムです。
「5000円でいいんですか?」その一言が突き刺さった――キャリコンとしての覚悟が試された日。
皆さんは、キャリコンサーチに登録されていますか?たまに問い合わせがあり、実際キャリアコンサルティングを行ったことが何度かあります。その中の一人にO氏がいました。
O氏と何度がメールでやり取りして面談することになりました。送られた履歴書を見て驚きました。私とほぼ同年齢で「東大卒」。まず東大卒に躊躇いを覚えました。高校の同級生にも東大進学は大勢いますが、東大は私のコンプレックスの一つです。なおかつ一流企業に勤務。役員待遇で転職が決まり、キャリアコンサルティングを受けたい、検索した中で私が適任と思い、選んだそうです。
エリートどころかエグゼクティブです。キャリアコンサルティングに理解や必要性をお持ちで、意識も高い系ですよね。こんな方のキャリアコンサルティングは経験がありませんでした。
第1回目の面談。じっくりお話を伺いましたが、CL視点の問題があるわけでもなく、CC視点の問題把握もできません。当然、仕事理解、自己理解もバッチリで、転職後の不安もなく、キャリアビジョンも明確でどうしたものかとオタオタするまま面談終了。次回面談のアポは取りましたが、質問がありました。「なぜ1時間5000円なんですか?安くないですか?」ガーン、衝撃でした。当時私は2級技能士の資格しかなく、1級取ったら1万円と勝手な思い込みがありました。しどろもどろに回答しましたが、安かろう、悪かろう・・・、そう感じられたかもしれません。私の自信のなさも価格に反映されていたかもしれません。
第2回目も同じような状況で、新たな展開もなく、当然ながら3回目はありませんでした。私は基本的な来談者中心療法における、自己一致も受容共感的理解もできず、自分のコンプレックスと向き合っていただけでした。悔しいやら情けないやらどん底でした。が、これをバネに自分を指導できる指導者になりたい。その年、1級技能士に合格しました。
Oさん、あの時は情けないキャリコンでごめんなさい。キャリアコンサルティングに理解があるOさんに残念な思いをさせ、キャリアコンサルティングを否定するような思いに至らせていたらそれは私の責任です。謝罪します。優秀有能なキャリコンは大勢います。
Oさんがご活躍されていることを願うばかりです。
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