計画的偶発性の自己怪事
【第24回:バイブル】
「1級キャリアコンサルティング技能士の大井宗太郎が人生を振返る中で見つけたキャリアサンプル」を不定期にお届けするコラムです。
自由と孤独、不安と誇り。「男おいどん」は青年期の迷いを映す、私の人生の鏡だった。
松本零士、と聞くと何を思い出しますか?銀河鉄道999や宇宙海賊キャプテンハーロックですかね。私の松本零士は「男おいどん」です。少年マガジンに連載されて、松本零士の名が世間に知れたのです。松本零士の原点です。全九巻、私の隠し書棚に保管しています。
主人公、大山昇太は九州から上京して、夜間高校に。何もない四畳半の下宿で暮らす。サルマタ(パンツ)とインキン、押入れにはサルマタから生えた食用可能なサルマタケ(きのこ)が群生。バイトも続かない不器用な金欠青年。「無芸大食人畜無害」がアイデンティティ。松本零士の実体験がモデルになっているそうです。
興味ある方は、最近、豪華愛蔵版全5巻が小学館から発売されました。お勧めはしません。思春期に差し掛かった当時の私には、この青年が切なく、哀れみ深く、見えない自分の将来と重なり、こんな生き方も良いな、いやこんな生活できない、と憧れと不安が入り乱れていました。だからこそバイブルだったのです。当時何十回も読み返しました。松本零士さんありがとう。大山昇太ありがとう。
大山昇太は社会の落伍者として描かれていたと言っても良いのでしょう。自分はこうなりたくない、と思いながらもこんな自由気ままな人生も有りだな。まだ来ぬ数年先の青年期の自分探しの指標でした。
7月22日の東京新聞で、「松本零士展 創作の旅路」が六本木・東京シティビューで開催の記事を見つけ、即座に駆け付けました。記事を読むとこの記者も正に私と同じように「男おいどん」をバイブルにしていたようで、同年代で同じ時代を生きたんだと思います。
大山昇太は、夜間高校中退、バイトも長続きせず、無芸大食人畜無害だけが取り柄。社会の落伍者になりかけています。具体的な夢もなく、漠然とした不安もあり、いつかビッグになってやるというプライドは持ち合わせています。
松本零士も大山昇太の将来を描くことができなかったのでしょうか。最終回はえっと言う展開です。さて、キャリアコンサルタントとして、大山昇太とどう向き合うか。難しいクライエントです。
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